後輩と話をしていて、
アクション監督がストーリー映画をつくるとつまらない理由とか、
アクション監督とストーリー監督が二人いて、
アクションはいいんだけどストーリーがつまらない映画になる理由について話していた。
僕は、ひとつの感情をつくるのが、
アクション監督の仕事だからでは?と答えた。
アクション監督はアクションを作る振付師、
と考えるといいかな。
殴る、蹴る、チェイス、爆発、
もろもろのスタント、
なんでも危険なことならやるだろう。
その、スリルを描くことは彼の得意技だ。
同様に、AV監督がいたとしよう。
彼はエロ、セックスを描くのが得意である。
彼らは「ひとつの感情」を描くプロであり、
それ以外はできないと考えられる。
アクション監督が普通のドラマをつくるのは下手だし、
AVのストーリー部分は見てられないものだ。
(かつて映画監督志望がピンク映画を仕事のためにやっていた時代があり、
そのときは映画としてピンク映画が面白かった時代がある。
AVのストーリーはそこまでの人はいないだろうなあ。
全部見ていないから知らんけど)
で、
何が違うかというと、
ストーリーというのは、
「複数の感情を描く」ものだからである。
複数、というのは、一人の人の中の複数の感情もそうだし、
複数の人の感情、という意味でもある。
もちろん複数の人の複数の感情もある。
一人の中でも、
Aという感情とBという感情が同時に働くことがある。
アンビバレンツ、というやつだ。
アクションで、AVで、これがあることはまずない。
そして、複数の感情が、AからBになり、そしてCになる、
というのも、
アクションやAVではない。
AとBがあり、途中でCが生まれたが、
Aがより強くなりBはなくなるが、
AとCが対消滅してBに戻る、
などの複雑な感情もないだろう。
複数の人の間で、別々の感情があり、
それらが喧嘩したり、同じになったり、
変化していったりも、
アクションやAVではないだろう。
そんな複雑なものは、
アクションやAVではまず求められない。
ややこしいな、となるだけだしね。
複数の感情を描くというのは、
ただ思いつきで順番に描くということではない。
なぜそうなったのかを描かないと、
単に猫の機嫌が変わるのを見続けることになってしまう。
そこに必然があるから、
ストーリーになるのだ。
なぜそうなったのか、なぜ別のXにはならなかったのか、
そして、観客の感情もそれに同調するほどに、
感情移入しているのか。
そして、そのように劇的にいくつか変化していった結果、
ラストの感情に至ったときに、
「なるほど、最初からこれらは全て計画されていたのか」となるほどに、
構造が浮かび上がるだろうか。
そうなるものがストーリーであり、
そうならないものはストーリーではない。
猫動画と同じ、
感情の日記に過ぎない。
ストーリーが日記にならない理由は、
「すべてが一つにつながったときに、
全貌が見えて、それらが示す意味が分る」からだ。
あるいは、
観客が予想しているものがあり、
それを適度に裏切ったり期待通りになったりの、
伴走の面白さがあるからだ。
伴走、すなわち感情の目まぐるしい変化で夢中にさせておいて、
最後まで駆け抜けたときに、
それがこういう全貌の意味があったのかー、
と感心したり、腑に落ちることが、
感情から見たストーリーというものだ。
これが出来るのは、
アクション監督ではないし、
AV監督ではない。
ストーリー設計者のみであると思う。
もちろん、アクション監督やAV監督出身者が、
ストーリーが絶対にできない、
ということは言っていない。
だけど、
彼らがやっているものは一つの特化であり、
七色の感情の変化のコントロールではないし、
それらを俯瞰から見たときにタペストリーとして編むことでもない。
だから、「一つが出来たら七も出来るでしょ」とは限らないと思う。
そもそも出来た人は、
元アクション監督とか、
元AV監督とかわざわざ言わないので、
知られていないだけかもしれない。
あなたはストーリーを書く。
複数の、七色の感情が押し寄せ、
順番に変化し、
複数の感情が同時進行して、
同調したり反発したりするものを書いている。
唐突に変化せざるを得なかったり、
ずっと守る感情もあるだろう。
そして、最後の感情にやってきたときに、
これらの一連に何の意味があったのか、
感慨深く振り返るものを、
書いているのだ。
これは、アクション監督がやるべきこと、
AV監督がやるべきこととは、
全く異なる方向のものである。
ひとつの強い感情のコントロールとはまたちがう。
もちろん両方出来る人がいるかもしれないことは、
断っておく。
逆に、ストーリーテラーは、
「いま一つの感情に集約するべきだ」
と思ったらできなきゃいけないよ。
2026年07月11日
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