2026年06月09日

【薙刀式】メジロ式と薙刀式の違い

なにやら面白そうな話題なので首突っ込んでみよ。

じーびすさん:
> メジロ式は、薙刀式が同時押しで濁音や拗音という「要素」を付加して「じょ」などを作るように、同時押しで「していない」を作っているに過ぎません。何がそんなに違うのでしょうか。

僕はだいぶ違うなーと思うので、
話を整理してみる。


まず前提として、
メジロ式は3つの機能的レイヤーをもっている。
これは速記の進化した歴史順のレイヤーだと思う。


1. 子音と母音を同時押ししてカナを一つ出す

これは10キーの字幕用ステノワードの機能だ。
実際のステノワードの運用は、
これだけを使っていたら間に合わないので、
省略入力をメインに使うらしいが、
まあとりあえずこれを原始的な速記入力と呼ぼう。
これだけなら、
子音母音同時押し系配列、
phoenixカナ配列、かわせみ配列も同じジャンルといえる。

2. 左右に同じものを置き、二音節同時入力

ソクタイプの工夫部分。
漢語の二音目のtkなども含め、
両手で二字熟語を打てるというアイデア。
(コメントから、そもそも全ての熟語タイプに対応してないそうだ)
メジロ式は、ソクタイプのややこしい打ち方を、
より洗練して整理し直している、
と考えられる。

3. 省略入力

子音+母音ではない、
独自の同時押し定義により、
今のところ、動詞活用形や助詞を直接打てるそうだ。
ここがメジロ式独自なのか、
ソクタイプにも同様の体系があり、
一部改変なのかが、
ソクタイプの仕様が公開されてないため判断できない。
いったんはメジロ式独自と解釈しよう。

詳しくは、
https://github.com/JEEBIS27/Plover_Mejiro#%E7%95%A5%E8%AA%9Eabbreviations
略語の項に一覧がある。
一言で○○系ね、と表せないくらい定義がたくさんある。



じーびすさんがいうメジロ式とは、
大きくは3の体系を指しているようだ。
(ご本人のコメントより)

1、2はそれが無理な時の補助みたいな感じだろう。
(その実践的なバランスがわからないので、
打鍵動画を見たいんすよ。
調子よく3が使えてる時、使えてない時の区別をしてみたい)


速記ジャンルでは、
もともとの子音母音同時押しというアイデア
(英語では閉音節の一音節を打つのも含めて)
では速度的に足りず、
ないし手間が多すぎて、
どうやら省略入力メインになるっぽいんだよね。

字幕用の10キーのステノワードでは、
電話帳一冊分の省略入力を覚えて、
使いこなす技能が必要で、
ソクタイプと同じく、そこは有料で非公開だそうな。

(そこがオープンソースの思想と反してるため、
実態が外から見ることができず、
自作ステノワードがなかなか作られないんじゃないかしら)


つまり、
速記入力とは、
我々が紹介される子音母音入力はまだ序の口で、
その先の省略入力体系が、
本体の可能性が高いっぽい。

YouTubeで見た字幕入力の様子では、
たとえばゴルバチョフとかも1アクションで省略入力していた。
なんとなく95%くらい省略入力で、
それでできないところだけ音声同時押しみたいな感覚。

なので、おそらく「メジロ式」といった場合、
省略入力の部分が本体なのだろう。



で、そうだとして、
メジロ式と薙刀式の違いについて整理しておく。

以下、漢直が入ると話がややこしいので、
まずは日本語が仮にすべてひらがなで書かれるとしよう。


薙刀式(カナ配列としての)は、
原稿用紙の1マスを単位として書くことを、
愚直にやっている配列だ。

つまりレゴブロックはカナ単位だ。
原稿用紙には50音+濁音+半濁音+小書きの、
ざっくり80種類しか存在しないので、
それを1アクションで出力するための装置だ。

拗音と外来音は、
本来1モーラ1カナを当てるべきだったが、
カナが足りないゆえに、便宜的に2カナ表記しているだけだろう。

ということで、
直感的には、
1マス1アクションを忠実にやるだけの配列だ。

実はこれはカナ配列の歴史的にはそんなになくて、
拗音外来音1アクションも含めれば、
下駄、新下駄、シン蜂蜜小梅、姫踊子草、
そして薙刀式の5つしか実現していない。
(派生形をのぞく)

そして薙刀式だけが、すべて同置を実現している。

このうち新下駄と薙刀式は、
カナの軌跡、つまり線の打鍵をかなり意識していて、
新下駄は統計的な軌跡を重視して、
薙刀式は意味的な軌跡を重視した。

だから意味が軌跡として空間的に置かれている感覚になる。
(新下駄は統計濃度の線が空間的に置かれている感覚になる?)

これを称してラクダエンさんは、
(これまでの統計確率論的な配列と異なる)意味論的配列とよんだ。

これは、
原稿用紙の1マスが1単位、
そしてそれを繋いで線を描く、
という感覚から来ると思われる。


一方メジロ式は、
n打でnマスの線を描くのではなく、
n個の意味塊をn個のハンドサインでぶちこみ、
機械が勝手に日本語形式に直してくれるような配列である。
(それが何文字になるかはその言葉次第)

なので、極端に言うと、
間の翻訳機を変えたら、
英語も同じハンドサインでできる可能性がある。
(両言語の構造上、完全対応は無理だろうが、
部分的には共用できると思う)

これをして、「意味直」と呼んでいるのだと思われる。


ものすごく乱暴に対比すると、
薙刀式は、n打の線、m打の線、k打の線……と、
意味を線単位で一シークエンス一シークエンス切りつけていく。

メジロ式は、n個の意味、m個の意味、k個の意味……と、
意味を重ねたものを、一個一個スタンプしていく。

メジロ式は一個次元が上がっているように見える。


僕が知りたいところは、
「とはいえ全ての意味を定義できない以上、
ここに定義されてない、
微妙なニュアンスはどうやって書くのか」ってところかな。

ざくっと書いて直すのか、
そこはちまちまと子音母音入力なのか、
というところ。

たとえば助詞だけで日本語には70個くらいあるわけで
(wikiの助詞の項参照)、
それを意味的に打ち分けるくらいなら、
そもそも短いんだしカナの流れの方が楽だろう、
と予測する。

たとえばATC 2025の動画では、
めちゃくちゃ速い熟語やエッセンシャルワーカーに対して、
「とは」だっけかな、
これは一音ずつ打ってた記憶がある。
そこは1個ずつ行くんだって思った。

今なら「とは、」くらいは省略入力しそうだけど、
全ての語を定義できない以上、
そこはどうなんの?
って疑問はあるんよね。
(ビット計算的には入るかもしれないが、
人間に可能かどうかという意味で)


これはまさに今僕がやっている、
部分漢直の問題とおなじで、
そこにないものはないですね、なので、
残りの漢字(7割)はカナ漢字変換でやってね、
というスタイルをとってるのに似ている。

そうすると、
定義される有限個と、
定義されてない実質無限個の境界面を、
どう定義するかという新しい問題にブチ当るのよね。

「そこはセンス」と、
作者の責任になるしかないなー、
というのは今思っているところ。

そうすると、境界面違いが、配列の違いの個性になりえるよね。


以前英語の速記の流派を調べたら、
死ぬほど出てきて(100ぐらい)びっくりしたのだが、
それは子音母音の配置ではなくて、
おそらくはこの省略入力法の違いだと予想される。
(ちゃんと調べてない)


で、薙刀式の場合、
ワンショット漢直を含めて、
原稿用紙1マスを1打で出して、
レゴブロックパーツを組み合わせるように、
言葉を組み合わせるようにする。

メジロ式は、
何文字にするかはわからんが、何個の意味かは打てる、
みたいな違いだろう。

ここに、書く感覚と言う感覚の違いが、
ありそうだなーと感じている。
出力の文字ひとつひとつに責任を負う物書きと、
意味に責任を負う発話的なメジロ式の違いかなー。



そもそも僕は、
漢字で表記するかひらがなで表記するかにも、
責任を負いたい。
たとえば「できる」と「出来る」は使い分けたい。

カナ配列だけではIMEの段階で書き分けるしかないが、
それは遅くて、心に発生した瞬間、
入力の段階で分けたい。
「でき1る」「でき2る」の単語登録方式に挑戦したこともあるが、
今ワンショット漢直なら、
変換前に可視化されてるのがいいところ。

僕はどこまでいっても写植としての道具を考えていて、
その一文字をこれまでカナでやってきたが、
そこに漢字も入れ始めた感覚だ。

別に清濁別置でもよかったけど、
僕の指が足りないのですべて同置にしたら、
指がめっちゃ楽になって、
線を意識しやすくなった、
というのが薙刀式だろう。
なので漢直といえども、前後の線ごと打つ、
というのが現在地点。


他方、
メジロ式は省略入力で、
特定の意味空間は文字数以上にバンバン進められる、
という風になっている。

薙刀式の立場から見ると、
ことばが痩せるのでは?
つまり、全ての言葉を使える前提ではなく、
特定の言葉の組み合わせだけが特急にのってるから、
そればっか使うのでは?
という疑いがある。

あれだけの膨大な定義があれば、
大体済むんですよ、なのか、
まあ細かいニュアンスのときは速度を落としてじっくりいきます、
なのかが、打鍵動画を見てみないとイメージできないのよね。


これは、僕の語彙が人に比べて多いから、
ということとも関係しているかもしれない。

NTT研の語彙数テストによれば
https://www.kecl.ntt.co.jp/icl/lirg/resources/goitokusei/vocabulary_test/php/login.php
僕の語彙は13万語だそうで、
平均よりまあ多い。

一つの意味を言うときに、
いろんな言い方があるやろ、
その時に選ぶのが表現である、
という無意識がある以上、
一つの意味を言いたくても、
それをどのように表現するのかに趣をこらしたいわけで、
それには写植パーツの組み合わせの方が、
小回りが効きそうなイメージがある。

逆に言うと、一つの事を言うのに、
毎回アワアワしてるから効率が悪いともいえる。笑
だけど、その写植パーツを効率よく線で呼び出せれば、
効率いいよねというのが薙刀式だね。


メジロ式はそれをハンドサインに圧縮してるので、
線より速くなる可能性はある。

意味を増やしたいならハンドサインの数を増やさなくてはならず、
漢直何字まで覚えられて自然に運用できる?
と同じ事が起きそう。


薙刀式がワンショット漢直を取り入れたところで、
最終的にはメジロ式とワンショット漢直は似たところに行くかもだ。

だがワンショット漢直はあくまでも薙刀式のカナ位置ベース
(読みが同じカナから始まるのが7割)なので、
1アクション1モーラのレゴブロックであり、
一概念=パーツを組み合わせた線で、
その線の集合が薙刀式だなあ。
(薙ぐ、という薙刀の根本をうまく象徴に使えてる)

線、線、線、という感じで空間から線単位で意味を削り取ってる感覚。


メジロ式は一概念=1ハンドサインで、
そのハンドサインの集合、
ということで、
単位系の切り分けが根本的に違うと思った。

空間から意味を削り取ってる感覚は似たようなものかもしれないが、
想像するに、面、面、面、って感覚で空間から取り出してる感覚かもだ。


物理的には「同時押しの組み合わせ」なのだけど、
それは表面上の形だけで、
中身の単位系の考え方が違うように感じる。
posted by おおおかとしひこ at 11:40| Comment(6) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フォームとして身体に内在するって言っておこられなかったんで、多分メジロ式は「取り出す」じゃなくて「出す」だと思うんですよね。呼気。あんま手触り感なさそう。
じゃあ実際に触れてるキーボードに対する手触り感はどうなのよっつって「手の内」って表現を使ったりしたんですけど、そこはどうもよくわからんですね。僕の想像だと、「キーボードに対して働きかける」のではなく、「キーボードを使って手の形を作る」んじゃないかなーと思ってるんですが。ツイスターゲームっていうか。
Posted by ラクダエン at 2026年06月09日 12:00
>ラクダエンさん

出すのか?通過させるのか?
とかが自分はどっちなんや、というのもよくわからんので、

> ツイスターゲーム

印(九字とか)が近いのではと思ってます。
印は理屈では自分の中の気をその形を借りて出すもの、
みたいなはず。
観想として薬師如来なんかを思ってその形をつくると、
薬師の力、つまり治癒力が上がる、
みたいな現象は似てるかなと。

対して、薙刀式は薙刀で脳内の言葉の棚を薙ぐような感覚で、
取り出してる気がしますねー。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年06月09日 13:54
内在の話に関して、個人的にはハンドジェスチャーのような感覚なんですよ。サムズアップで「いいね」みたいな意味を表現することに近いです。「どの指を立てるか」みたいなのと「どのキーを押さえるか」みたいなところが対応している気がします。
Posted by じーびす at 2026年06月09日 15:13
>じーびすさん

やっぱ印(いん)に近いなー。
九字護法印をしらなければこれでも参考に。
臨兵闘者皆人烈在前で有名なやつです。
https://paradjanov.biz/art/notes/1811/

これ以外にも密教系にはたくさんの印があります。
とりあえずこの本のビジュアルでわかるか。
https://aucfree.com/m/items/u304240088

これを手の前でつくって真言を唱えると、
このマークの意味の力が湧いてくる
(仏の力を内在させる)という「設定」です。
自己暗示系呪術のたぐいかな。


真言は唱えないけど、
両手で定められた形をつくり、
目の前で空間にスタンプし、
次々に意味を組み合わせる、
という意味ではだいぶ似ていますね。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年06月09日 16:04
ちなみに とは ですが、下記
親指だけでは
とはnt-t
とは、nt-nt
とnt-
は-t
は、n-t

あるいは普通に
TAU-TKA (TKでH行を表す)

1アクション2−3文字行けるのが楽ですね
 アクション
 楽ですね はどちらも1アクションです。
 また記号もあります
ただ微妙な助詞遣いは分けて入力が必要があるときもあるのはその通りですね
Posted by @PTclown at 2026年06月10日 22:38
>@PTclownさん

ATC200ともなると他人の配列の指使いはほぼ視認できないんですよw
薙刀式ならわかるけど、のレベル。
なので打鍵音と出来上がった文字で推測するしかないんですよね。
いちいちスローで、打ち方まで確認してたらきりがないので……
(前回は40配列あったし)

思ったよりたくさんパターンがあるんですねー。
咄嗟にいけるのかな。
一発でいけるやつかちまちま1個ずつ打つかの二択になりそう。
あと手癖で出したやつから足していくか。

今のところメジロ式の動画がATCしかないので、
もうちょっと色々見たいのでぜひマスターしてください!
Posted by おおおかとしひこ at 2026年06月10日 23:54
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