ハイコンセプトってのがたまにアメリカの脚本論で使われるんだけど、
いまいち意味が分っていなかった。
コンセプトとどう違うのか、
ログラインとはどう違うのか。
そもそも何がハイのことなのか。
ローは何がローのことなのか。
僕なりの理解。
あらすじとは、
映画のストーリーをざっくり縮めたものだ。
数百字くらいだろうか。
オチを最後まで書くのは梗概という特別な名前が与えられているが、
あらすじはオチまで書くものと、書かないものがある。
内部資料的にはオチまで書くだろうが、
外に向けた資料としては、
「果たして結末は……?」なんてヒキで終わっているものが多いだろう。
ログラインは、
それを1行から多くて3行にまとめたもの。
色々な書き方があると思うが、
大岡式ログラインでは、
「Aが異物Bと出会い、Cする話」とまとめることが出来るのであった。
もちろん、それは絶対的なルールではなくて、
もっと良くなるなら何でもよい。
コンセプトはぼんやりした言葉で、
それがどういう楽しみ方をされるのか、
みたいなざっくりした売り方の方向や、
ニュースになる方向みたいなものだ。
「これはこのように楽しんでください」
というインストラクションと思っても良い。
何度か取り上げているが、
東京五輪は「福島復興」というコンセプトだった。
まったくそのコンセプトは生かされていない、
嘘つきだったわけだが。
これだけで終わればいいのだが、
最近よくハイコンセプトというものを聞く機会があって、
何がどうハイなのかを調べてみた。
ずっとハイコンテキストのことかと思っていたが、
どうやら違うらしい。
何がハイなのかを考えると、
スピードだと理解した。
つまり、ハイコンセプトとは、
ハイスピードコンセプトというべきかもしれない。
高速なコンセプトというわけではなく、
「伝わり方が速いコンセプト」ということだ。
たとえばジュラシックパークならば、
「最新技術で恐竜を蘇らせた島のテーマパークをつくるが、
ある日嵐が来て柵が壊れる」
という感じ。
ざっくり1行で示せる。
「恐竜を蘇らせたテーマパーク」が、
コンセプトだとすると、
これは「閉じ込められた島からの脱出劇」であり、
かつ「敵は(これまでにない斬新な)獰猛で言い訳の出来ない恐竜」
という面白さがあるわけだ。
つまり、ビジュアルアイデア、ストーリー、
新規性などが全部詰まっているものが、
ハイコンセプトというものだろうか。
ハイコンセプトがないものは、
「地味な映画」になると思う。
たとえば、
「故郷に帰った息子の、父との対話」や、
「正義が悪を倒す話」とかだと、
地味でロースピードコンセプトだろう。
つまり、
「その映画の良さがロースピード
(全部見る)でしか伝わらない」
ということだ。
ローかハイかの境目は、
ざっくり1秒で考えていいと思う。
(現実的には3〜5秒?)
それだけを聞いても「まあよくあるやつだな」
というリアクションしか出来なくて、
「いやいや、話をちゃんと聞いてくださいよ、
これがこうで……」となったり、
「最初から最後まできちんと見れば、なぜ良いかが分ります」
というタイプはローコンセプトということだ。
なぜロースピードコンセプトではだめで、
ハイスピードコンセプトがいいかというと、
「沢山ある娯楽の中から選ばれるため」
だと思う。
「史上最高の、音速で走るジェットコースター」はハイコンセプトだ。
「モデル限定の合コン」もハイコンセプトだろう。
「うおおおそれは良さそうおおお!」
という伝わり方が速いものが、
ハイコンセプトというわけだ。
沢山のハイコンセプトなもの、
とりわけ映画以外のものがネットではあふれている。
だからそれに対抗出来るだけの、
ハイコンセプトはありますか?
ということを、問いたいわけだね。
人気俳優○○の新作、
がもしハイコンセプトになるくらいの人気スターだったら、
それだけでもニュースになり、
人々の話題になることだろう。
しかしそれだけではあまり強くない場合、
「これは恐竜をリアルによみがえらせた島で、
嵐が来て柵が壊れて脱出しなければならなくなった話なんですよ」
と説明すれば、
「それはモデルの合コンよりも面白そう!」
となるわけだね。
いや、モデルの合コンの方がまだ強い?w
合コン行ってから映画でも遅くはないなw
映画はリアルに負けるが、
あとで何度でも見れるというのはデカイかもしれない。
それはつまり、
あなたがどうやって、何に金を払うのか?
ということと関係してくる、ということだね。
少なくとも「どっち?」という天秤には乗るわけだ。
そういう、
多くの大衆を相手にしたときに、
ハイコンセプトがあれば強く、伝達が速く、
従って、
「誰が説明しても客が呼べる」ということになる。
宣伝部、マスコミ、タイアップ、口コミ、
全てが機能する。
もしローコンセプトだったら、
「注意して宣伝して、じっくり説明して、
それで信じてもらえてやっと客が呼べる」
というものになるに違いない。
だから、
すぐに伝わり、客が呼べそうなものは、
ぶっちゃけ便利なのだ。
そんなもの、簡単に思いつくかね?
思いつかないからこそ、
それは金になるのだ、
ということだね。
また、
ハイコンセプトを見慣れたプロデューサーは、
「計画だおれ」に敏感だろう。
「勢いよく始まったはいいが、
連載するほどどんどん詰まらなくなっていく漫画」みたいに、
失敗するシナリオなんてごまんとあるからだ。
だからハイコンセプトには、
「それを誰がやったとしても、
面白くなりそうなポイント」があるといいと思う。
ジュラシックパークがいいのは、
「リアルによみがえった恐竜」とか、
「脱出しなければ食われる」という恐怖とか、
「説得が効かない、純粋で獰猛な新しい野生」
という新しさがあるからだ。
それは「(実力のある)誰がやったとしても、
面白い話になるぞ」
ということなんだよね。
つまり、作家性とかいう不確かなものにベットしなくてもいい、
という安心感もあるということ。
もしうまくハイコンセプトが出来たら、
「ふむ、よさそうなので、
その先を見せてくれたまえ」となるだろうね。
僕は、
こういうのは風俗やAVなんかが分りやすいと思う。
「一発で伝わる、新しさ(そしてそれは良さそう)」
は、手を変え品を変え、発明され続けている。
最近だとNTRとか鬱勃起とかだろうか。
最近でもないか。
やたら色んな女優で見る「出張先で嫌いな上司と相部屋」シリーズは、
ずっと作られ続けているよな。上司絶対絶倫なんだよなw
ハイコンセプトがあるものは、
一度ヒットしたら定番ジャンルになる。
真似されることで消費されてゆき、
次のハイコンセプトが出るまで、
しばらく流行するだろう。
飽きられてきたとき、
次のハイコンセプトが生まれるだろう。
コロナの巣ごもり期間でつくられた映像、
というのをこないだ久しぶりに見たんだけど、
みんな家にいて、ダンスして、
100分割画面で「みんな一緒だぜ」
みたいなやつがやたら多かったんだよね。
それはその時はハイコンセプトだったんだろうけど、
今やねえ、という感覚だと思う。
こうやって、
ハイコンセプトは世につれ変わって行く。
というわけで、
結局、ハイコンセプトとは、
「それは何がおもしろいの?」というコンセプトと、
「それはどういう話なの?」というログラインとが、
混ざったかのようなものだろうか。
そしてそれがハイかローかだけを判断できるもの、
ということかなあ。
もちろん、境目はなく、
どこからどこまでがハイコンセプトかはグラデーションがありそうだけど、
結局ハイコンセプトになるには、
メインのアイデアが強く、
対立(コンフリクト)が明確で、
新規性のある、
新しい楽しい乗り物、みたいなものが出ていれば、
いいんじゃないだろうか。
「最後までじっくり見れば分るんですよ」
「この物語の本質は、○○です」
じゃあ、ローだということだ。
「どんでん返し」自体はハイコンセプトだ。
だけど、「AからBにどんでん返しするんです」
とネタバレしてしまった瞬間、
つまらなくなってしまう。
だからどんでん返しウリには出来ないよね。
どんでん返しは強力なのに、
ハイコンセプトになれない、
という矛盾を抱えていると思う。
これは「いけちゃんとぼく」というどんでん返し作品で、
痛いほど味わった。
宣伝部はどんでん返されたあとを前提にしていて、
僕は返される前を前提にしていて、
興行の方針が立たなかったわけさ。
正解はいまでも、
「どんでん返しを前提にしない(匂わせはやるべき)、
ハイコンセプトをつくるべき」だったと思う。
キャッチーであること。
新しいこと。
すぐに理解できること。
おもしろそう!と思えること。
それってどうなるの?と続きが気になること。
これまで聞いたことのないようなものであること。
予測できて、しかも予測できないこと。
そして、「○○○な○○○があるんだって!」
と、誰もが誰もに説明できそうな新しさ。
とても難しいが、
その芯をどれだけ食っているかが、
ハイコンセプトということだろうか。
これを示すには、
いくつかの方法論がハリウッドにはあるようだ。
「もしも○○が○○だったら?」に当てはめる、
「これは○○のパターンだけど、新しさは○○なんだよ」に当てはめる、
「○○が○○に出会ってしまった」に当てはめる、
などなどのパターンがある。
もちろん、
ハイコンセプトが必ずしも必要であるわけではない。
全ての名作がハイコンセプトであるわけでもない。
だが、
それがハイコンセプトであると、
人口に膾炙しやすいのはたしかだ。
人口に膾炙するというのは、今風にいうと、
バズりやすいということだ。
ちなみにRedditから、
ハイコンセプト/ローコンセプトの例を引用する。
Redditは自動翻訳が入って読みやすくなったねえ。
複数の書き手なので文体がバラバラなのは勘弁して。
恐竜テーマパークが大暴走 (ジュラシック・パーク)。
時速50マイルを下回ると爆発する満員バス (スピード)。
夢の中から情報を盗む泥棒チーム (インセプション)。
世界最大かつ最も華やかな船の、史上最も華々しい処女航海は、歴史上最も悲惨な海難事故の一つで終わる。(タイタニック)
寄生エイリアンの力が、南極の凍てつく荒れ地にある研究基地を攻撃する。(遊星からの物体X)
21世紀の変わり目に、ある男がバーチャルリアリティセットから引きずり出され、現実世界が終末後のディストピアの悪夢であり、彼がそれを
救わなければならない選ばれし者であることを知る。(マトリックス)
アマチュアゴルファーが、現存する最高のマスターと対戦し、なぜか奇跡的に全米オープンに勝利する。(ザ・グレイテスト・ゲーム・エバー・プレイ)
酒に酔い、堕落したサンタクロースのパフォーマーと、エルフを演じる彼の友人が、クリスマスの時期にデパートを強盗する。(バッドサンタ)
北極でエルフとして育てられた人間が、自分の本当の出自を知り、父親を探してニューヨーク市へ旅立つ。(エルフ)
1973年、多くの人々に価値がないと思われていたサラブレッドの競走馬が、史上9頭目の三冠馬となり、25年ぶりに達成し、3つのレースすべてで最速記録を樹立し、現在も破られていない。(シービスケット)
ゾンビ強盗映画(アーミー・オブ・ザ・デッド)
「トップガン - 戦闘機版ロッキー4」
ハイコンセプトといっても、
色々なグラデーションがあることが分るね。
逆の、ローコンセプトの例。
2002年のサクラメントでティーンエイジャーの女の子が人生を切り開く (レディ・バード)。
知的なブルーカラーの清掃員が、型破りなセラピストと友情を育む (グッド・ウィル・ハンティング)。
地味な郊外の父親が、中年期の危機に陥っていく (アメリカン・ビューティー)。
10代の女の子が妊娠して、赤ちゃんをどうするか決めなきゃいけない(ジュノ)。
2人の不機嫌な男が、生涯にわたる愛憎関係についておしゃべりし、回想して日々を過ごす。(グランピー・オールドメン)
様々なキャラクターが、90年代のロサンゼルスの落ちぶれた犯罪者の裏社会を織りなす。(パルプ・フィクション)
第一次世界大戦中に寄宿学校に送られた若い女の子が、仲間のクラスメートに空想的な物語を語って過ごす。(リトル・プリンセス)
ある男が精神科施設に転送され、病棟を運営する全体主義的な女性、ナース・ラチェッドを含む、カラフルなキャラクターたちと出会う。(カッコーの巣の上で)
「カッコーの巣の上で」はコンセプトを誤解している気がするが、
まあ引用なので。
つまり、
伝える誰かによって解釈が変わるものは、
ローコンセプトになりやすいわけだね。
ハイコンセプトになりやすいのは、
「それでオチはどうなるんだ?」
とセンタークエスチョンが気になるものだろうか?
ジュラシック・パークの、「脱出劇」と聞かされて、
「脱出できるんだよな?」と聞きたくなる、
というのは大きそうだ。
オチがわかって見る必要のないものは見ないからね。
仮に「脱出できる」と分かったとしても、
どうやって?を楽しめそう、
と思えるから、ジュラシック・パークはハイコンセプトなわけだ。
今後ハイコンセプトと出てきたら、
ハイスピードコンセプトと補って読むと分かりやすいと思う。
2026年06月21日
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と 大喜利=高度にレギュレーション化した お笑い、
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はお客さんにむけたものですが、
ハイコンセプトは内部で共有する類のものですね。
役割がだいぶちがいますね。