2026年07月25日

【薙刀式】僕が補完入力を否定する理由

僕は補完入力を切っている。
そしてライブ変換も、ニューラル変換も否定派だ。
車で言えば、AT派ではなくMT派ということだ。

それは、創作文とは、接戦方向に進むものではないから、
とまとめられると思う。



ラクダエンさんの記事。
文章と格闘することと、逐語的な言葉選びと、薙刀式
https://note.com/catfist/n/n5daf4059e861?sub_rt=share_pb

うん。まあ、そういうことなんだけど、
多分ここ一連のプロ的な書くことの話は、
ほとんどの人には理解されないかもなあ、
などと諦めながら、
それでも嘘はつけないので、
熱量は維持したまま書いているのはたしか。


次の文は一意である。

これに納得出来るかどうかが、
この書くという行為を理解できるか、
と関係しているかもしれない。

文というのは適当にはつなげないのだ。
適当につなぐのはエントロピーが最も大きいことである。
乱雑さが最大ということだ。
情報量の純度は最低値だ。ランダムなホワイトノイズということになる。

いくつかあり得る文から選ぶといいのだろうか。
それならエントロピーがかなり小さい。
多くの実戦文章というのは、
そうした複数あり得た未来から、
ひとつを選んでいくような行為に見える。

文章を書くのが下手な人は、
もっといい選択肢に気づけず、
最初はうまく行っても、
どんどん美味しいところから外れて、
外れくじを引き続ける人、
という風に考えている人もいるかもしれない。

でも実のところ、
選択をすべて正解を引く人が、
文章がうまい人なんじゃないんだよね。

もちろん、文章のセンスがある人は、
その時点で最大に効果がある、
エントロピーが最低の、情報量の濃い選択肢を選ぶことが出来ると思う。
それをして、
まるで将棋の読みのように、
たった一つの正解を引き続ける、ということがあるかもしれない。

でも、多分文章のうまい人はさらにうわてで、
「次が一意しかないように、
前提と流れを組み立てる人」だと思うんだよね。

つまり、最初の設計、構想段階で、
詰み筋が決まったというか、
全部がもうそれしかない、
という構造にしているんだよ。
だからあとは、それが破綻しないように書いていくだけ、
ということになる。
その理想的な逆算に対して、
流れてしまうかどうかだけをチェックしていたら、
文章は次の一意、次の一意、
が自動的に決まり、
自動的に落ちまで書けるものだ。

これをして、自動書記ということがある。

自動書記は、神が下りてオカルト的に書くようなイメージがあるけど、
条件さえ整えれば、別に毎日あるよ。
ごく普通の状態だ。
むしろ、それが出来ないなら、
文章書きってかなり苦しいと思うね。

文章書きが迷うのは、
当初想定されていた一意の文よりも、
いい文が出来たときだね。
それを使ったら、当初の詰み筋が狂うときに、
どっちにしようか迷うくらいだろう。


で。
そういうテキストは、
最初から最後まで滔々と一本道で流れる、
わけではないんだよね。

滔々と流れる、エントロピー0の部分と、
そうじゃない、意外な流れをつくる、
転換点があるんだよ。
(ところが、や、一方、の逆接が分りやすいかな。ほかにもいっぱいある)

つまり文章というのはいくつかの転換点で区切られた、
滔々と流れる複数の流れをうまくつないだもの、
という構造をしている。

たかが短い2000字程度のブログ文ですらそうだ。
(ちなみに今回は長く書いたので3000字)

最初に構想するべきことは、
この転換点と流れの内容なんだよね。

アウトラインエディタはそれをイメージするのに使いやすいが、
実のところこれが頭の中で出来ない人は、
アウトラインエディタを使っても出来ないので、
あんまり役に立たないと思う。
備忘録として役に立つ程度かな。



さて。ようやく本題だ。

僕は予測変換、ニューラル変換否定派である。
滔々としたエントロピー0の流れの部分を接続、
転換部を転換と呼ぼう。
つまり文章とは、接続、転換、接続、転換……
という構造をしている。

予測変換、ニューラル変換が得意なのは、
現在の接線方向だ。
「この勢い、流れで行くなら、これ」
というものである。
あるいは、
「過去この流れのときがこれだったから、これ」というわけだ。
つまり接続は得意なわけ。

だけど転換は逆である。
予想を裏切ることが大事だ。
だからドキドキするわけだ。

つまり三角関係でいえば、
つまらないけど確実に安心出来る、幼馴染の男子と、
ドキドキする、これから何が起るか分らない、
不良男子との間で揺れ動く乙女心に、
読者を持っていくのが上手な文章というものなのだ。

接続と転換を予想できないように混ぜていくのが、
コツということだ。


これに、予測変換とニューラル変換はついてこない。
接続は上手だが、
「ここは転換ですよね?」と、
予測の逆を出すことは出来ない。
つねに接続しか出せない。
予測を裏切る予測など出来ないわけだ。
だってその予測を裏切るのが転換だからだね。


だから僕は予測変換をオフにする。

いま接続を書いてるから予測変換オン、
いま転換を書いているから予測変換オフ、
に簡単に切り替えられるならそうするけど、
ひとつレイヤーがふえるからやらない。
僕は自分の文章と思考に没頭したいのであり、
別の操作をしたいわけではないからだ。

AIによるニューラル変換も、
結局は予測精度があがった予測変換、
という意味でしかないと思う。

今iphoneではニューラル変換を使っているが、
それはデフォのiphoneのアホ変換に比べればマシ、
というのが使っている理由でしかなくて、
接続したいからニューラル、
というわけではない。
だから「こっちが打ってもない文字を足して、
長くする機能」はオフにしたいのだが、
長押しして×を押し続けることによって、
ある程度は軽減できるっぽいな。


結局、
予測変換もニューラル変換も、
今の状態で接線を引いて、
その方向に行ってくれ、という指示でしかない。

その予想を裏切り、
なおかつ納得させるのがプロの文章だ、
と定義できるかもしれない。

「えっ、うそ! なるほど、そういうことか!」
にならないと、
ヒキがないしおもしろくないからだね。

この「うそ!」という部分が転換だね。
これを合間合間に入れて、
感情を揺さぶっていくのだが、
そんなのは予測すら出来ないことだろうね。


これらを含めて、
「次の文は一意しかない」
ということなんだよね。

だからつまり、
うまい文章書きというのは、
潮目をうまく見て、
順(接続)で行くか、
逆(転換)で行くかを見きわめる、
サーファーみたいなものだ。
だからノリがいいわけだ。


逆に、文章が下手なのは、
全部順で行く糞真面目、
全部逆で行くただの逆張り野郎、
順で行くべきところと、逆で行くべきところが全部逆になる、
タイミング最悪野郎、
そして、
順も逆もちょいちょい外す、
法則性のないハズレ、
などだろうか。


全体が見えていない文章、
目の前が見えていない文章、
大局観の順逆も見えていない文章は、
僕は下手だと思う。

もちろん、全員には求めないよ。

でも、
出来る人を邪魔する道具は最悪だし、
出来ない人が出来るようになる、
成長の機会を奪い続ける配列も最悪だと思う。

理想は、その道具を使っているうちに、
いつの間にか上手くなっていることだけど、
まあそんな都合よく行くわけではないだろうね。
(でも薙刀式で書きやすい文章は、
ある程度整いやすいと思うが、
どうだろう)



そうそう。
書くのがうまくなるには、
書くことを沢山しなければならない。

どんな技能でもそれは同じで、
量が質的転化を起す臨界量まで、
量をこなさないといけないのだ。

これを今まで何一つそれを経験したことない人がいるなら、
それを伝えるのは無理筋になる。
だから僕は全員にこれが理解できるとは思っていない。
でも部活で何かを克服したり、
仕事で何かのスキルを身につけた人なら、分るかもしれないと思う。
文章もおんなじだよと。


書く鍛錬を積むには、
qwertyローマ字は不自由すぎる道具だ。
文章の量で突き抜けるまでに疲弊してしまうし、
薙刀式なら疲弊してあきらめなかった人でも、
qwertyではあきらめてしまうと思う。

だから、そういう意味では、
全員がqwertyに轡をはめられている。
全員が轡を外されて文章がうまくなるとは思えないが、
本来飛べたはずの鳥を閉じ込めているのなら、
それは文化に対する罪だ。

posted by おおおかとしひこ at 12:30| Comment(10) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>予測変換とニューラル変換はついてこない。
接続は上手だが、
「ここは転換ですよね?」と、
予測の逆を出すことは出来ない。
つねに接続しか出せない。
予測を裏切る予測など出来ないわけだ。
だってその予測を裏切るのが転換だからだね。

抽象的でよくわからないのですが、具体例ありますか?かな漢字変換で、転換ってどういうときですか?またそれが生じる割合は全体の何%ですか?
Posted by 匿名 at 2026年07月25日 12:45
>匿名さん

今までの流れを無視して別の話をしたときです。
一見違う話をしてきたら、
実は前の話とつながっていたときは、
そのスタート点は転換点です。

何%かは、文章によるでしょう。
深いやつを1発かます場合(たとえばどんでん返し)もあれば、
細かく目先を変えて連発して、
目くらましをかける方法もあると思います。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年07月25日 13:10
具体例がよくわからないです。特殊事例ではないでしょうか。ニューラルは特に同音異義語のかな漢字変換を直前直後の文脈を参照して通常の変換では実現できなかったような精度を出してくれますが、それよりも「転換」時に意図通りの変換をしてくれないということのデメリットが遥かに大きいということでしょうか?具体例がよくわからないので、事例を上げていただけますと幸いです。
Posted by 匿名 at 2026年07月25日 13:26
>匿名さん

ニューラルに限って言えば、こちらが入力した以上の文字数の候補を出すところですかね。

もう別の話をしているのに前の話を引きずるなよ、ということはよくありますね。

とくに僕は予測変換をオフってニューラル変換を使いたいんですが、混ざって分離できないんでしょうねえ。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年07月25日 14:24
なるほど、Azookeyとかですかね..?IMEの設計次第で、入力文字数以上の変換は実行しないとかはできると思うので、ニューラルの問題というより設計の問題ですね。予測変換とニューラルの有効無効の個別設定も同様ですね。IME次第な気が。

またライブ変換に否定的な理由は何でしょうか。スペースキーを押す回数を激減できるので、長時間の文章入力には特にとても効果的かと思いますが。
Posted by 匿名 at 2026年07月25日 14:51
>匿名さん

> 設計の問題

に切り分けられるかどうかまでニューラルがどうやって動いてるのか知らないので、とりあえず一体化させています。

> IME次第な気が。

どのIMEは何ができて何ができないか、
一覧できるといいんですがね。
横断的な比較をしないとよくわからん、みたいなことになってます。


>またライブ変換に否定的な理由は何でしょうか。

過去記事に詳しく議論してますが、
1. 視界の端でチラチラされるのがいらつく
2. 私はAと一意に書きたいのでありBやCという可能性を含んだシュレディンガー状態を書きたいのではない(だから自作漢直をやる)
がおもな理由ですかね。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年07月25日 16:56
なるほど…ご懸念されてることの殆どは最近出てきた新IMEのmozkeyで解決できそうですが、漢直に手を出されてる以上は思想の違いなのか、コンコルド効果かわかりませんが、全部MTで行きたいということなんでしょうか。実際に新しい技術に触れてみられた上で、それに対する批判をぜひ聞いてみたいですね。
Posted by 匿名 at 2026年07月26日 14:38
>匿名さん

コンコルド効果は半年ぐらいしかこの漢直には使ってないので、
薙刀式の8年に比べれば知れてます。

基本的には、
僕の手から出たものを勝手に動かして欲しくないです。
画家が絵描いてるときに色が勝手に変わったら切れるのと同じです。
たとえば10万字の小説で誤字は1字もあるべきではなく、
その全てに責任を持って初めて作品なので。

適当な文章ならライブ変換を使っても良いですが、
いちいち切り替えるのも面倒だし。

基本的には自分の筆を乱したくないので、
一つも偶然を入れたくないですね。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年07月26日 15:27
>画家が絵描いてるときに色が勝手に変わったら切れるのと同じです。たとえば10万字の小説で誤字は1字もあるべきではなく、その全てに責任を持って初めて作品なので。

確定文字が勝手に変わってたら流石に切れますけど、未確定文字に対してライブ変換はかかるので、本来スペースキーを押してガチャを引いていた動作を自動でするだけですよね‥?チラチラ文字が切り替わるのがお嫌でしたら、ライブ変換がかかるタイミングを大岡さんのタイピングの速度に合わせて調整されたらいいと思います。

>一つも偶然を入れたくない

手書きではない以上、スペースキーを押して、ガチャ引くことからは逃げられないので、それは不可能ですね。手書きや速記の研究に移行されたほうが良いかもしれないです。
Posted by 匿名 at 2026年07月26日 16:19
>匿名さん

快適なライブ変換がどういうものか見たことがないので、もしどこかに動画が落ちてたら見てみたいです。
どうも僕の体験したライブ変換とは違うもののような気がします。

ひたすら自由文を書いている10分以上のものがあると分りやすいかなと思います。
メジロ式を使ったものがありますが、メジロ式の挙動の方が気になって、まだライブ変換の方まで解析できていないので。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年07月26日 16:49
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