2026年08月18日

デザインの授業シリーズ

先日の仕事で新宿三丁目で乗り換えたのだが、
東京メトロ副都心線新宿三丁目→都営新宿線新宿三丁目の乗り換えをしたかった。
いったん改札を出て、地下を歩いて別の改札に行くパターン。

この動線誘導がとてもよくなかったので、
ひとつひとつ突っ込んでいこう。
同時に、ではどうすればよいかを考えたい。


IMG_6846.jpeg

まず電車を降りた、メトロ側のホーム。
緑色の都営新宿線を目指せば良い。
まっすぐ、↑に進めばいいとわかる。
足元の表示も有効で、これは明らかでよい。

だけど隣の丸ノ内線が気になった。
上の表示灯は、曲がった矢印↑_(記号がないのでこれで代用します)
なのに、
柱は斜め線矢印、↖︎↗︎だ。

?と一瞬なる。僕は緑だからいいけど、赤に進みたい人は困るのでは?
と思って立ち止まって解読してしまった。

この、「一瞬の立ち止まり」があるものは、悪いデザインだ。

ラッシュ時に立ち止まって混乱するのは悪だ。
一瞬で理解できない悪いデザインのせいで、
渋滞が悪化する。
これは世界一の乗降客を抱える新宿界隈ではギルティだ。
悪いデザインが機能不全に陥らせるわけだ。


解読すると、
まず丸ノ内線に行くには、
この階段を「上がらず」、
横の狭いホームを奥に行かなければならないそうだ。
だとすると、↑_は正しい。
右のホームからも行けるそうなので、_↑も正しい。
「我々が何をすればいいのか」が明らかだからだ。

だが横の柱の↖︎↗︎が矛盾して「?」となる。
なぜ↑_、_↑にしないのかがわからない。

「同じ事を示すのに同じ記号を使う」のは、
デザインの基本だ。
記号化がデザインなのだから、1対1性が基本だろう。

「違う事を示すのに同じ記号を使う」、
「同じ事を示すのに違う記号を使う」のは、
この基本に反して混乱をきたすので、バッドデザインだ。

ところが、細かい字をよく読むと、
ラッシュ時は奥が混むので、
一端上の階段をあがり、
「のりかえ階段(それがどんなものかはここでは分からない)」
を使わずに、迂回せよということらしい。

実際目の前の階段を上がると、
乗り換え専用改札があった。
(一端改札を降りてしまうと、
乗り換えするよりも料金が高くなる。
この事故を防止する為の改札であろう)

ただそれが1個なんよね。
その誘導をしたとしても、その上で渋滞おきるやん。
動線誘導としてはかなりの悪手だ。
だったらやんなくてもいいんじゃないか。

まあそれでもやりたいなら、
左の柱では、
↑_(ホーム奥乗り換え階段)
(↑ 朝のラッシュ時は、混雑緩和のため乗り換え改札をご利用ください)
と表示するのが妥当だろう。右の柱は左右対称で。

このことで、矢印記号は同一性が保護されるし、
分かりやすくなると思う。


もう一つ気になるのは、床の誘導矢印だ。
これも合わせるべきで、
↑ ↑(ラッシュ時)
 ー|
のようにして、ラッシュ時の矢印を細くして、
奥のホームへの曲がった矢印を太くすれば意に沿うだろう。


このようにして、
「全ての意図が一瞬で伝わるようにする」
「同じ意味は同じ記号に揃える」
「違う意味は違う記号を使う」
のが、デザインの根幹部分だと僕は思う。


さて、つづき。
階段を上がり改札を出て、右を見るとこうなっている。
僕はここからまっすぐ行けばいいんだけど、
また腋のが気になった。
IMG_6847.jpeg

副都心線は今僕が乗ってきたものなんだけど、
↘︎の記号だな。

今階段を登ってきたのだが、
目の前にはエスカレーターがあるため、
「俺は今から登る」という意識がある。
そこに↘︎と下方向の要素があると「?」ってまたノイズになるよね。

Uターン矢印、|↘︎(今記号がないので無理やりこれで表す。
Uターンだけど右後方みたいな斜め45度がいいと思う)
を使えばいいんじゃないの?

立体起動を平面記号で表してるから、
原理的には合わないのは承知したとしても、
ベストを尽くした記号とはいえないと思う。

さらにそこからエスカレーターを上がるとこう。
IMG_6848.jpeg

なんだよ、8方向矢印オンリーじゃなくて、
曲がる記号あるんじゃん、と切れる。
8方向しかないからさっきの副都心線はあれしかないのか、
と慮ってやったのに、あるのかよ、と。
これは全体を見てないバカのデザインだなと。

ちなみに→になってない理由は、右側に改札が見えてるけど、
これは副都心線の改札だから。
さっきホームの端まで歩いてればここから出られたわけだ。

その改札をかわして右に折れたらこうだ。
IMG_6849.jpeg

左側の都営新宿線の表示が↘︎になってることに注意されたい。
これは、右側の表示↓であるのを見ると、
「エスカレーターで下れ」を意味してると思われる。

しかし先程の「副都心線↘︎」は、
エスカレーターで下るのではなく、
右後方へのUターンであった。

「同じ記号を別の意味で使う」バッドデザインがここにあるわけだ。

エスカレーターで下るなら、
−↘︎(右に行って右下に折れた矢印)で示せばいいのでは?

で、そのエスカレーターを降りようとして本日のクライマックス。
IMG_6842.jpeg

てめえ、さっきエスカレーターで下りるのは↘︎じゃなかったのかよ。
なんで→になってんだよ。空飛べとでもいうのかよ。

そして↑↑という床の表示と、
「←下り」の矛盾よ。
我々は都合↘︎→↑←の4つの矢印で誘導されたことになる。

This is バッドデザイン。

これはとても簡単に修正できる。

↘︎と→は、−↘︎に統一できる。
↑←は、↑に統一すれば良い。「下り」はやめて、
床に「↑下り」と書けば良い。

あるいは、どうしても直前に下りを表示したい
(上りエスカレーターと間違えないため)なら、
▽下りなどのように、動線記号と上り下り記号を変えれば良い。

「同じ意味は同じ記号」
「違う意味は違う記号」を、徹底すればいいだけのことだ。

「右に折れてエスカレーターを下る」
「このエスカレーターを下る」を、
同一記号で示せばいいだけのことである。


記号を日本語で表せばわかることだ。
同じ日本語は同じ記号で、
違う日本語は違う記号で示せばいいだけだ。

ここまでが、デザインのやることだ。

(もちろん、駅構内をどういう構造にして、
どのように人の流れを制御するかというグランドデザインや、
どこに矢印を掲出すれば分かりやすく混乱しないか、
を決めるデザインもある。
今やってることは、
ここに掲出するとしたら、どの記号でどう誘導するか、
の細かいデザインをやっている)

デザインとはつまり設計であることがよくわかる。

そのあと、ようやくガワの話、
いわゆる見た目のデザインになるわけ。
矢印の角度は何度がいいか、
太さは何mmがいいか、
角は尖った方がいいか丸まった方がいいか、
何色が見やすく、オシャレか。
フォントは何が見やすくオシャレか。

デザインというのはまずこの目に見えない設計があって、
それを意匠でくるむわけだね。
だから設計デザインと意匠デザインがある、
と思った方がいい。(ちなみにこれは僕の造語)


デザインは見た目ではない。設計だ。

映画の世界では、
美術デザイナーは図面を引く人、
施工は意匠デザインをする人、と役割が分かれている。
もちろん意匠デザインをしつつ、最終的に図面を引く設計士もいる。


脚本というのは、
設計(構成や空間設計、動機やプロット)もやれば、
意匠(キャラクターやセリフ)もやるわけだ。
両方をごっちゃにしてはならない。



デザインというのはまず、
意図が秒で伝わる構造をつくること、
そのために記号化すること、
同じ記号は同じ意味で、
違う記号は違う意味にすること、
でスッキリとつくる。

それができてないのは、デザインができていない。
posted by おおおかとしひこ at 14:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
斜め交差 少しカーブ 上下移動 = 難問。
Posted by MMX at 2026年08月18日 17:59
>MMXさん

とくに難問ではないすよ。
「ここでこのように決める」が一貫されてれば迷わないです。
できればオール東京デザインがほしいくらい。

メトロと都営というルールの異なる汽水域だからこその混乱ですかね。
東急乗り入れもあるか。
問題は、それに気づかずに放置されてることだと思います。

特に僕は始発移動で、1本逃すとだいぶ遅刻だったので、
初見で焦りながら怒って写真撮ってましたw
Posted by おおおかとしひこ at 2026年08月18日 18:40
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